カープレックス®の歴史
- 塩のたまもの -
「忠臣蔵」で知られる播州赤穂は、古くから「塩田の町」として知られていますが、塩造りの過程で生成してくる苦汁(にがり)に含まれる成分から、塩化カリウム、臭素カリウム、炭酸マグネシウムといった数多くの化学物質が得られます。これらの化学物質は貴重な製薬原料となることから、製薬会社の塩野家(現、塩野義製薬)は、大正6年6月に赤穂の地に塩野製薬所 赤穂分工場を建設しました。近くを流れる千種川のきれいで豊富な水もこれらの化学薬品の製造にとって重要な要素でした。
一方、苦汁から得られる化学物質の一つである炭酸マグネシウムは、当時からゴムの添加剤や歯磨き粉の原料とされており、大正末期から昭和30年代にかけて神戸を中心とするゴム業界へ盛んに供給されました。この頃、商標として「鯉印」が使われており、これが現在の「カープレックス®」という商品名の由来となり、製品袋にも「松鯉印」が印刷されています。その後、天然ゴムから合成ゴムへ移行する中で、より補強性の高い、高性能な添加剤が求められるようになりました。
ドイツのエボニック(当時、デグサ)ではゴムの補強充填剤として早くから合成シリカの研究に取り組み、乾式法のシリカ(現在のAEROSIL®)が開発されました。
一方、日本では戦後、沈降シリカ(湿式法のシリカ)の開発が進められていました。塩野義製薬でも昭和28年頃から本格的に研究開発が進められ、昭和30年代にカープレックス® #1120や#67が本格的に製造開始されました。その後、吸油性の高いカープレックス®#80が開発され、沈降シリカの用途も、ゴム以外に農薬や塗料・インクなどの工業用の他、医薬や食品用途でも各種助剤として幅広く使用されるようになりました。
現在は、各用途のニーズに合わせて20品種以上のカープレックスⓇがラインアップされています。